京ことば源氏物語 第七帖【紅葉賀】
女房語り 山下智子
音楽 雅楽ユニット天地空
雑喉文右衛門:篳篥 楽琵琶、和琴
江口由美:龍笛、箏
松岡仁美:笙
1 紅葉の賀
2 藤壺への思い
3 若草の君と左大臣の姫
4 罪の皇子誕生
5 紫のゆかり 立后
6 紅葉賀の段 原文朗読
7「青海波」雅楽演奏:天地空
デザイン 東京図鑑鈴木衛
京ことば源氏物語を音源として未来に遺す】ということ、これはこれまで果たせないできた、恩師中井和子先生とのお約束でした。
ずっと自分にゴーサインを出せずにいたのですが、考えてみると語りという長い道のりに、自分自身に及第点を出すことなどこれから先もあり得ないだろうというのが結論でした。
語れば語るほどに源氏物語の海は深くなり、眼前の課題の山は高くなり、ゴールという名の到達点などないのです。
少しずつでももし登っているのなら、通過点である今の語りを録音し、そして次にはまた少し成長した語りを録音する・・・そんな道なら目の前に遠く遙けく続いても歩いて行ける、そう思いました。
奇しくも今年2021年は中井先生の十三回忌の年。未熟ながらも録音させて戴きました。
音楽で参加して下さるのは、雅楽ユニット【天地空(てんぢく)】
雑喉泰行さん( 篳篥ひちりき)、江口由美さん( 龍笛)、松岡仁美さん(笙)の御のお三方です。
不思議な御縁で結ばれて、CDへの参加、そしてリリース記念公演には所属しておられる大阪楽所様から十五名もの楽人、舞人の方々に出演して戴けました。
中井先生が天から糸をたぐり寄せてくださったのでしょうか。
CDは74分という制限があるため、残念ながら色気おばちゃま源内侍さんのご登場は控えて戴くことに。その代わり、ボーナストラックとしていつものように抜粋した原文と、天地空さんの一曲「青海波」が入ります。
奇跡のような復曲【保曾呂倶世利 ほそろぐせり】
「紅葉賀」の中に、源氏の君が御自邸の二条院に戻っても直ぐにお顔を見せて下さらないことに対して可愛らしくすねる若草の君(紫上)のご機嫌をとって、箏の琴を弾かせる場面があります。
源氏が笛を吹いて導くと、拍子も違えずに小さな身体でとても上手に琴を弾く姫。思い焦がれる藤壺の宮の姪っ子と知って誘拐同然に連れてきて、惜しみない愛で教育しているこの姫が思い通りに成長するのを(かねての思いが叶う)と頼もしく思う、そこで奏されるのが【保曾呂倶世利】です。(保曾呂久世利 ほそろくせり. とも)
今では失われている曲と源氏物語関連の本にはありますが、この曲を聴きたい・・・!と天地空さんにもちかけたところ、掘り起こして下さいました。
ほそろぐせりという名は失われていますが、高麗楽の「長保楽」の 破の曲中に伝承されていたのです。
長保といえば一条天皇の御代! 紫式部がその中宮である彰子に仕えていたその時代に、帝の御前で披露された楽、帝の御名がついてるくらいだからその御代を寿ぐいわばその時代の君が代のような曲?!ゾクゾク震えがきました。
式部は、「いづれの御時にか・・・」と、当時より50〜100年くらい前の設定で源氏物語を書いています。一条天皇が彰子のサロンにお渡りになって物語を読まれた時に ほそろぐせり と出てくれば、笛を能くされた帝は当然長保楽を遡り、笛で乙女を導く美しい源氏にご自身を襲ね、「むふ♥️ 佳き計らいよ」とその後彰子様と、わが世の音色とばかり合奏されたかもしれません。そんな妄想さえしてしまう式部の粋な気遣いにもう脱帽です。
この古譜については、ここでその出典を開かすことが出来ないのですが、一般に知られないばかりか雅楽界の方でも聞いたことがないというほどの貴重な曲だということです。
雅楽の歴史のなかで演奏の形態が変化し、明治以降高麗楽では弦楽器は奏されなくなったそうですが、今回は物語の通り、当時合わせて奏されたであろう笛と箏で演奏していただきました。
奇跡のような復曲が実現したのです。
これまで何度も語ってきた「紅葉賀」のこの場面が、このレコーディングを機に急にリアルに迫ってき、時を超え、長保の時空に繋がることができる、CDが資料価値としても非常に高質なものになると思います。天地空さんとの出会いには、なにか大いなる力の導きがあるとしか思えません。
第七帖 「紅葉の賀」
若き源氏の君 渾身の舞
とりわけ手をつくしてお舞いやしたお姿は
入綾の時などは
その美しさはぞっと寒気をおぼえるほどどして
この世のもんとも思えしまへん
桐壺の帝が朱雀院行幸の催し物を藤壺に見せたいと行った試楽で、光源氏は頭の中将と青海波を見事に舞い、人々の涙を誘う。弘徽殿女御だけは源氏の美しさを呪い、藤壺は罪の意識でその舞を観る。行幸当日、源氏は再び青海波で絶讃を博して正三位に昇進する。
源氏の密通により懐妊した藤壺は源氏を遠ざける。落ち着きのない源氏に、正妻葵上は冷たく接し、源氏は北山で見初め自邸に引き取った幼い紫上(藤壺の姪)を一層可愛がる。
元旦、左大臣家で源氏は、葵上の態度に自身のありようを省みる。
二月、藤壺は源氏とそっくりな男皇子を出産、帝の疑いもない喜びように二人は罪を恐れる。源氏は混乱した気持を二条院で紫上を相手にすることで慰める。
そんな中、源氏 は源典侍という好色な老女官との逢瀬を頭の中将に見つけられ閉口する。
帝は退位して新皇子を東宮に立てようと考え、藤壺を中宮に立て、源氏は宰相(参議)に 昇進。弘徽殿女御は藤壺の立后を深く恨む。
***
源氏の君のあでやかな舞に、燃える紅葉も色あせるほど。
輝かしい行幸にかさねられた恋の闇は、皇子の誕生によって、
壮大な物語の運命の大河に漕ぎ出すのです。
グレー部分は時間の都合により今回は省略致します。
第七帖【紅葉賀】 女房語り:山下智子 音楽:天地空
京ことば語り:山下智子 音楽:天地空
1紅葉賀 2原文抜粋 3雅楽青海波 *時間の都合で「源典侍の段」を省略しています。
6pのライナーノーツには代表的な歌の抜粋、あらすじと人物の相関図、雅楽及び雅楽器の紹介などがあります。
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